手書き文字で伝わる「何か」
2023.02.01【作家の手書き原稿】
先日、手書き文字で伝わる「何か」について書かれたエッセイを目にした。
それは、筆者が学生時代に大好きだった作家の生まれ故郷を旅行した際の経験を書いた文章であった。
感動を期待して小説の舞台となった土地からを訪れたものの、さほどの感動が無く、肩透かしを味わったようだ。
しかし、作家の記念館で手書きの原稿や手紙を見て、小説や詩に込められた作家の心情が伝わってきたのだという。
【宮沢賢治?】
このエッセイに書かれた作家は、岩手県が生んだ詩人・童話作家の宮沢賢治であろうかと想像してみた。
【銀河鉄道の夜】の原稿→
【雨にも負けず】
宮沢賢治の代表作「アメニモマケズ、カゼニモマケズ」で始まる詩を、岩手県出身の名女優が岩手弁のイントネーションで朗読したのを聞いたことがある。
厳しい自然に翻弄される農作業の様子や、土の重さや冷たさまでもが伝わってくるような、朗読だった。
この朗読に背景を入れるとしたら、それは活字ではなく手書きの原稿こそがふさわしいと感じたのを覚えている。
【手書き文字と言えば】
手書き文字と言えば「書」で、まず顔真卿の名前が思い浮かぶ。
展覧会で見た「祭姪文稿」は、まさに時空を超えて胸に迫るものがあった。臓腑からの叫びが形となったような書で、東京の展覧会でも長蛇の列が出来た。
余談ではあるが、8世紀の唐朝で起きた安禄山の乱は教科書にも出てくるが、その陰に顔真卿のドラマがあったことは案外知られていない。何かもったいない気がする。
ペン字のお手本のような流麗な文字を書いてみたいものだと思いつつも、ごつごつとした金釘流の文字にも唯一無二の味があるのだと居直って、脳活も兼ねて手書きに励みたいと思う。